ながみ塾 Nagami Prep School

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2026.03.12人は変わる

また春を迎えました。3月は終わりのようでいて、実はスタートに立つ時です。
「今年はどうしようかな。」
「どんな一年になるのかな。」
ワクワク、ちょっと不安、そんな入り混じった季節です。


『人は変わる』と題しました。本当に、人は変わります。そして、変わった自分が正しいのです。多くの人が、自分が変わったことに、苦しむと思います。
「なんでこうなっちゃったんだろう。」
「こんなはずではなかったのに。」


それは違う、と思った方がいいかもしれません。こっちが本物だと思えば、今の自分を愛せるようになります。変わってしまったことは、誰のせいでもないからです。













雙葉学園の高校三年生の時でした。私はただ1人、放課後の地理の補習授業を申し込みました。何故か友達は皆塾の方を選び、塾や予備校に行かない私は、ある男の先生とマンツーマンの授業を学校で受けることになりました。
「えー、まぁちゃん、嫌じゃないの。あの先生と2人っきりだよ。」
頭が禿げたその先生は、とても優れた良い先生でしたが、みんなの評価は手厳しいものでした。
「うん。いいの。」
私はその先生の歯切れの良い教え方が好きでした。


授業は毎週木曜日の放課後に行われました。
「じゃあ、今日から始めよう。何が望みかな。」
先生は私に尋ねました。
「共通一次満点が欲しいです。」
私はそう答えました。医学部を受ける私にとって、必要な社会科は共通一次(昔の共通テスト)だけでした。足切りにかからないために、また千葉大は一次の配点もかなりあったので、高得点が必要だったのです。
「わかった。じゃあこれでいいね。」
先生は用意していたらしく、驚くほど薄い地理のミニ本を私に手渡しました。
「こ、これだけですか。」
私が声を上げると、先生は笑いました。
「アッハッハ。そうだよー。だって一次試験だけでしょ。これで十分。」
私は明るい先生の笑顔を見て、とても嬉しくなりました。小学校の恩師、八杉先生も、全く同じことを話していたからです。
「眞佐江ちゃん、薄い本でいいから、一冊しっかりやると良いのよ。」
と。


さて、私が与えられた問題を解き始めると、先生はしばらく待っているようでした。
窓の方を見ていました。また問題に向き合って、ふと目を上げると、今度は先生は雑誌を手にしていました。
『音楽の友』。表紙は指揮棒を振るカラヤンでした。フンフンと言いながら、先生は雑誌を読むわけでもなく、眺めていました。
ちょっとその様子は可愛らしく思えたので、私は「先生、クラシック、お好きなんですね。」と言いました。
すると、先生は丸い目を大きくして、私の方へ身を乗り出して、
「ハハハァー、そう見える?」
と大きな声で笑うのです。
「それはそうですよ。だって、先生の持っていらっしゃるその本、クラシックの本ですし・・・。」
私は、カラー写真の多いその雑誌が、とても値段が高いことを知っていました。
「そうだよね。普通そう見えるよなぁ。」
先生は満面の笑みで、雑誌の表と裏をひっくり返しながら、表紙の写真を交互に何回も眺めました。
「こんな高い本を買っちゃってるんだもんね。それにサァ、僕、これ定期購読してるんだよ。」
先生は、破顔です。思わずつられて、私も笑いました。
「知ってます。先生、定期購読ですか。本屋さんに頼んで?ふふっ。誰がどう見ても、それじゃあ、当たり前に音楽好きですよ。」


すると、先生は急に真顔になって、
「浜口さん、よーく覚えておくんだよ。」
と言うのです。木曜日の昼下がり、普段は面談にしか使わない3畳ほどの小部屋に、優しい光が差し込んでいました。
「??」
次の言葉を待つ時間が、とても神聖に感じました。
「あのね。人って変わるんだよ。」
「?」
「僕はね、若い頃、君くらいの頃は、クラシック音楽なんて大嫌いだったんだ。本当に、そんなことやってる奴は、どういう奴なんだ?っていうくらい、嫌いだったんだよ。不思議だよね。その僕が、今こうしてこんな高い雑誌を、毎月定期購読してるなんてさ。アハハ。音楽大好き人間に、見えるだろ。アハハハハ。」
先生は嬉しそうでした。そして、こう続けました。
「これだけは、よく覚えておきなさい。人は変わるんだ。変わった自分が本物だからね。変わって自分についていきなさい。ハッ、ハッ、ハァ。」


『人は変わる。』
この話、この言葉は、その後、私の人生の支えになってきました。
小さな頃から母のように医者を目指していた私は、医者はやりたくない、と思うようになりました。そのことがとても辛く思えた時に、私は変わった自分を選択することが出来ました。この先生、この言葉のおかげです。


悲しいけれど、人は変わるのです。それでも、変わらないものがあるから、それは愛おしいのです。好きだった人が嫌いになったり、気に入らなかったものが、妙に納得出来るようになったり。でも、絶対に嫌いにならないものもあり、絶対に求めたいものもあるのです。いつまで経っても好きな人もいます。いつまで経っても、出来ないこともあります。
『変わった自分は本物。』
そう思わなければ、私はここまでやってこれませんでした。状況に応じて強かに生きる。これからの子供たちに一番必要なのは、時代に対しての反射神経だと、変わる力、変わった自分についていく心だと、私は思うのです。

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